パアプウロード
第三章[KILL THE KING]

第4話「half in love,half in hate」

「リッチーブラック…?」
松井の首を左手で抱え、右手で彼女のこめかみに銃を押し付けてる男。
それは秋元が思い描いていた夫の姿とは懸け離れたものだった。
(ただ真面目で平凡な、それが私が知ってる大黒の姿)
「はっ!はっ!はっ!驚いたか?秋元いやキルザキングと呼んだ方がいいかな?この場じゃ」
大黒はなおも不適な顔を笑顔に替えながら叫ぶ。
その瞬間松井が身をかがめ、大黒の腹にひじ打を見舞った。
「ぎゃー!」
悲鳴をあげたのは松井の方だった。
大黒の腹には、いや腹と言わず身体自注を剣山のごとき鋭角的なもので完全武装していた。
「お嬢ちゃん、ちょっと静かにしなよ、お話中なんだぜ」

バーン!

「ワアー!」
大黒は笑顔のまま、血が吹き出している松井の右手を撃った。
「松井さん!」
「店長…、大丈夫です…、この男を…、この男を…」
松井は余りの痛さに気を失いかけていた。
「大黒、なぜなの?何があったの?6年前のあなたとは別人よ?」
秋元は涙ながらに訴えた。
「6年前かぁ」
大黒の笑顔が止まった。
「6年前お前に去られてから俺は…」
大黒は涙を流し始めた。
「大黒…」
秋元は歩み寄りながら話した。
「あの時はごめんなさい。あなたに闇の仕事の事を隠していた事は謝るわ。でもあなたに迷惑をかけたくなかったの。許して、もうこんな事は止めて…」
秋元は大黒の前まで来て言った。
そして右手で大黒の涙を吹きながら左手を松井に向けてる銃のところまで持っていった。

バーン!
「はっ、はっ、はっ!」

高らかに鳴り響いたのは銃声と大黒の笑い声だった。
「それでもキルザキングか?最強の闇の戦士か?がっかりだぜ!」
そして右足を撃たれてうずくまる秋元を見下げるように、冷酷で感情の全くこもってない声で言った。
「俺はリッチーブラック。この闇の組織レインボーのリーダーだ。お前と会う何年も前からな」
秋元は右足を押さえながら大黒を下から睨み返した。
「リッチーブラック?なぜあなたが?リッチーブラックは私の両親を殺してトップに上り詰めた男よ。私とあなたが会う8年も前に。は!あなた!」
大黒は銃を構えながら近くのテーブルに腰掛けた。
「もう二十年前になるか。あの時ゃ俺は単なるちんぴらだった。だが俺はどうしてもこのレインボーって組織に入りたかったんだ」
「その時チャンスが回ってきた。そこにキルザキングと呼ばれる最高の殺し屋が居たんだが、組織の幹部の中に奴を煙たがる連中が居てね」
「何せ自分が気に入った殺ししかしなかったらしいから、そんなこたあ俺にはどうでもいいが」
「それで俺に話が来たんだ。奴は素人は殺さないって。簡単だったなぁ。実にあっけなかった。ここ横須賀の海に消えていったけなぁ」
話を止めて大黒は煙草に火を着けた。
「あなた、煙草は吸わなかったんじゃ?」
いつの間にか秋元と松井は寄り添いながら倒れていた。秋元は右足の痛みも忘れ松井の髪を撫でている。
「店長…ありがとう」
松井が息も絶え絶えに話す。意識はしっかりしてるようだ。

「煙草?15の時から吸ってるぜ。途中4年程吸わない時もあったがなぁ」
「4年?」
「困った事になったんだ」
大黒は話を続ける。
「奴、キルザキングには子供が居たんだが、女だからって放っといたら力を付けてきやがって」
「やがてその女は両親を殺した男を捜してくるに違いない。その前に手を打たなきゃて」
大黒が少し間を置いてにやりと笑った。
「わかるだろ?」
秋元が立ち上がった。その眼はまさに闇の世界最強に相応しい修羅の眼になっていた。
「話は最後まで聞けよ!」
バーン!

玉が秋元の頬をかすめる。しかし瞬き一つせず大黒を睨む。

バーン!

今度は左足を打たれ、両足を打たれた秋元はなすすべなくその場に倒れた。
「店長…」
松井が倒れたまま秋元の所へ近寄る。
「大丈夫よ、この男は私の手でやらなければ…」

「話は最後まで聞きな」
大黒はじわじわと追い込んでいく事を楽しんでいた。
「その女は何と自分の両親を殺した男と結婚し、子供まで作ったんだ!」
「憎しみの黒い血が混ざってる子供をな…」

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