パアプウロード
第五章[願い(戦闘)]

その2 「機内にて…2」

美容室「パアプウ」店長、秋元。
彼女が横須賀で大黒と戦い、爆破で消えてから数カ月の月日が流れていた。
ハイジャクに居合わせた乗客も不運だが、もっと不運だったのはハイジャク犯の方である。
何しろ秋元はキルザキングと言われた最強の殺し屋だった。
しかもハイジャック犯のリーダーらしき男は彼女の両親を殺し、彼女を裏切り続けた男、大黒利一だった。
しかし秋元はその最低の男を愛し続け、横須賀の米軍基地で止めをさしたはずだった。

秋元は横須賀での爆破で吹き飛ばされた。そして海を漂っている所をインドの貿易船に助けられたのだった。
彼女は記憶を失った振りをしてその船に乗せてもらった。
行き先はカルカッタだった。
その港で美容師として船員達の散髪をしたりして生活していた。
そしてある日、船員の口から面白い事を聞いた。
ガンジス川を200キロほど北へ言った所にカターミと言う小さな村があり、そこにディーモンという伝説的な占い師がいると言う。
休みの日に秋元はそこに行ってみる事にした。
広いガンジス川を小さな船で下り、カターミらしき村についた。
そこは村と言うには人の出入りが何も感じない所だった。
秋元はどこまでも続く森の中を歩いた。
まるで何かに導かれるようにすんなりと進んでいった。
やがて辺りに霧が出てきた。そして1メートル先も見えにくくなったころ、大きな木の根元にひとりの老婆が座ってる事を気配で感じた。
「あなたがディーモン?」
秋元は聞いた。
「ほっほっほっ」
老婆はよく澄んだ声で笑った。
「さすがキルザキングじゃ、気配で感じおったか」
そしてキルザキングと言われて身構えてる秋元に近付いて言った。
「お主の仲間がお主を必要としている。それは七つの魂が揃って初めて力を発揮する…」
老婆は続けた。
「チャッピーを助けるんじゃ」
老婆はそういうと見えなくなった。
(チャッピーって何?人?動物かしら?)
秋元は狐に騙された気がしたが、自分をキルザキングと知っている事は気になった。
それに七つの魂とは「パアプウ」のみんなのことではないかと直感的に思った。
(パアプウの誰かが私のことを必要としている)
そう思うといてもたっても居られなくなり、その場を後にしようとした。
とその時、また老婆の声が森の上の方からした。
「言い忘れたが、そこに行くまでにやらねばならない事があるじゃろう。気を抜かぬ事じゃ」
「やらねばならない事って?」
秋元は霧の中の声に聞いた。
老婆の声は少し沈んだ声になった。
「最後の決着じゃ…」

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